ART & CRAFTS NAOTO MIYAZAKI Sculpture
造形のみを追求した グラフィカルな彫刻
グラフィカルな彫刻
2次元の写真だとキュビズム画のようにさえ見えるこれらの作品は、東京都内で活動を行う彫刻家の宮崎直人によるもの。どっしりとしたモノとしての存在感がありつつも、どこかグラフィカルな作りが印象的である。本連載のセレクターを務めるクリエイティブディレクターの南貴之は、宮崎の作品についてこう話す。
「宮崎さんの作品は東京っぽいと感じたんです。抽象的な造形がアートとクラフトの中間的なオブジェのようで、とても魅了されました。石を削って作る彫刻なのかと最初は思っていましたが、実際に見てみると石でもなければ陶器でもなくて、質感が特徴的でした。あとは何よりも、この造形センスがかっこよくて。アブストラクトで主張もあるんですけど、これを置くと空間がグッと締まる存在感があります。東京生まれの友人が僕の家に来ると、大体みんな宮崎さんの作品を欲しがるんです。感覚的なことで不思議ですが、東京らしさ溢れる作品だと改めて思います(南)」。
南の話を受け、作家である宮崎は自身の活動をこう振り返る。「グラフィックの仕事に長く携わっています。グラフィックは基本的には平面の仕事なので、逆に立体表現に興味が湧いてきて。最初は布や石などを拾ってきては、組み合わせてインスタレーションのような表現をしていました。とてもミニマルな表現方法だったのですが、そこからだんだん形だけに焦点が合うようになってきたんです。今では色もあまり使わなくなり、完全に形だけを追求した表現になりました。今回の作品は、まず骨組みを作り、そこに石膏を染み込ませた麻を貼り付けていくんです。形状にこだわっているので、このメタボリックな手法は僕にすごく向いていました。機材を使って削り出す彫刻ではないので、騒音も出ないからこそ東京で活動を続けていられるのかもしれません。今の自分の環境に合った手法として辿り着いたからこそ、この表現を伸ばしてよりオリジナルなものを突き詰めていこうと思っています。そういう意味でも他の影響は受けないようにしていますし、作っていて何かに似ていると思ったものは作り直します。可変性が高いので、細かいところを壊しては作り直しての繰り返しです。そうやって年間10個ほどの作品が出来上がります。常に意識していることとしては、『形あるもの全てが彫刻だ』という僕の師匠の言葉です。そのことを常に忘れずに、自分の内面から湧き出るものを形として表現しています(宮崎)」。
形だけを追求し、彫刻の可能性を押し広げている宮崎。彼の内側にある人間性が、次はどのような形をもってこの世に生み出されるのだろうか。
宮崎直人
平面的なグラフィック活動をしていたことで、対照的な立体表現にも興味を抱く。様々な素材を用いたミニマルなインスタレーション表現を経て、今は造形のみを独自の手法で追求している。
南貴之
グラフペーパーやヒビヤセントラルマーケットなどのディレクションを行うクリエイティブディレクター。今回の宮崎の彫刻作品には、その造形的センスに強く魅了されていると話す。
Select Takayuki Minami | Photo Masayuki Nakaya | Interview Takuya Chiba Edit & Text Yutaro Okamoto |