Creators’ Favorite Craft Items
クリエイターが愛用する モダンなクラフツアイテム 02
「現在の生活に根ざした上質なデザイン。それでいてクラフツマンシップがあるモノ」をテーマとした本号。この企画では、さまざまなジャンルで活躍するクリエイターたちに今回のテーマを独自に解釈してもらい、彼らが実際に愛用するモダンでクラフツマンシップがあるアイテムを紹介してもらう。一人一人の価値観やスタイルから見出されたアイテムは、彼らの日々を実に豊かにしている。だからこそ彼らの視点から何らかのアイディアを得て、自分自身が考えるモダンでクラフツマンシップあるものを手に取り、感性を刺激する時間を過ごしてほしい。
栗野宏文(UNITED ARROWS上級顧問)
逆転の発想が生んだ
アンチ・ファッション的ジャケット
「出会った時に衝撃を受けて購入したカラーのジャケットです。様々なジャケットの部分的なパーツを集め、パズルの様に組み合わせて一つの形に仕上げています。ポケットのカーブが肘に当てられたり、肩のカーブが裾に活かされたりと、パターンに沿って小さな布地を縫合するパッチワークとは根本的に異なる逆転の発想です。デザイナーの阿部さんは元々優れたパタンナーですが、パターンを熟知しているからこそ、複雑かつ逆転の発想を形にし、デザインとして昇華できる。ある種のアンチ•ファッションとも呼べるアイテムです。そのようなものづくりをする阿部さんやジョン・ガリアーノ、川久保玲さんのようなクリエイターの仕事に職人魂を感じます」。
◯kolor
https://kolor.jp
山田陵太(スタイリスト)
受け継がれるスピリットと
柔軟でユニークなデザイン性
「アメリカ先住民の方々が作る装飾品です。20年ぐらいかけて少しずつ買い集めていて、毎日身につけています。伝統的な手法で作られている歴史的背景があり、モチーフそれぞれに意味が込められているものもあれば、ディズニーキャラクターをモチーフにしたようなユーモラスなものもある。そのアイディアやデザインの柔軟性が面白いです。だからどちらかと言えば、王道から少し外れていて、ネイティブアメリカンジュエリーに見えないようなデザインが好きかもしれません。アイテムとして受け継がれる本質は残しつつも、デザインとしてある種のアップデートが行われていることで、愛着が湧いて長く付き合っていけるのではないでしょうか」。
二俣公一(CASE-REAL、二俣スタジオ 両主宰)
ドイツ最古の工房と
韓国出身の現代作家の邂逅
「バウハウスの影響を受け1924年に設立されたドイツ最古の工房の一つ、マルガレーテンヘーエのティーポットです。知人がオーナーを務める京都のギャラリー日日で一目惚れし、引越し祝いとして贈って頂いてから愛用しています。この工房は韓国出身の作家リー・ヨンゼが現在ディレクターを務め、彼女の造形や色使いに対する現代的な感性の豊かさが見事にミックスされています。このプロダクトは半磁器のため土味の面白さと磁器の丈夫さがあり、素朴ながらもモダンな作りです。近代的な思想や感性が、受け継がれる技術によって形となるハイブリッドなものづくりだからこそ現代にフィットする。このように過去と未来を繋ぐ存在に文化や思想を感じます」。
◯KERAMISCHE WERKSTATT MARGARETENHÖHE
http://www.kwm-1924.de
東野英樹(PHIGVELデザイナー)
精密に設計されたシンプルさ
「これは源流釣行をテーマに開発されたアルコールストーブです。フライフィッシングや釣行に関して調べているときに見つけたのですが、シンプルながらも精密に設計された構造が美しくて素晴らしいです。縁部分の小さな穴からトルネード状に出る火は不完全燃焼で赤くなることがほぼなく、通常のアルコールストーブよりも高火力で早くお湯を沸かすことができます。プロダクトとしての役割をしっかりと果たした上でシンプルさを実現していることにモダンさがあると思います。そういうものには直感的に魅力や美しさを感じますし、自然と長く愛用できる。ものづくりやアイテムはバランスが整っていることが一番大切ですし、僕もそのことを意識してフィグベルの服作りをしています」。
◯RiverSideRambler
http://www.riversiderambler.com
原太一(LIKEオーナー)
フラワーベースとしての異色さ
「クリエイティブスタジオのヤールがデザインしたフラワーベースです。LIKE(ライク)というお店をオープンする時にヤールの友人がプレゼントしてくれました。フラワーベースとしては珍しい質感のメタルや抽象的な色味を用いた表現が、斬新さを感じさせます。あるときから、ヴィンテージアイテムとモダンなプロダクトを並列させて置いたら新たな発見や面白さが生まれると気づいたんです。例えばこのフラワーベースは古い机の上に置いたり、他には現行品のソファとアンティークチェアを並べたりと。王道だけだとコテコテになってしまうので、モダンな要素を加えてバランスを取っています。新鮮さが生まれますし、時代とともに進化することが何事にも必要だと改めて思います」。
◯YAR
https://yar.tokyo
江田龍介(balディレクター)
スリムで完成された機能美さ
「“Wine concepts for wine lovers”というコンセプトでおなじみのスペインはプルテックス社製、プルタップスというモデルのワインオープナーです。2回に分けて誰でも簡単にコルクを抜くことができる機能性やスリムで完成されたデザイン、そして手頃な価格が人気の名作です。これは中でもデザイナーのジャウンドによる別注品で、シンプルなスチールカラーとエッチングのロゴがプラスされています。世の中の良質なアイテムのバランスを崩さずにアップデートするデザインコンセプトが彼らしくモダンなセンスだと思います。このように普段の生活に取り入れやすく、使うと気分の良いものを集めるようにしています」。
◯Pulltex × JJJJound
https://www.jjjjound.com
Photo Taijun Hiramoto | Interview & Text Yutaro OKamoto |