PHIGVEL × LADY WHITE CO. Special Collaboration
フィグベルとレディ ホワイト カンパニー 価値観が共鳴した 特別なコラボレーション
「New Classic」をコンセプトに上質なデイリーウエアを生み出す日本のブランド、フィグベル。そのブランド哲学は、デザイナー東野英樹への取材を通してSilverでこれまでにもご紹介してきた。コアなファンを持つフィグベルだが、2023年冬には意外にもミドリカワとのコラボレーションブーツを発表してファンを驚かせた。そんなフィグベルがまたしても期待の高まるコラボレーションを発表した。次なる相手は、アメリカは西海岸のロサンゼルスを拠点に活動するレディ ホワイト カンパニー。カットソーをメインに「Modern Sporty」なコレクションを展開しているブランドだ。インディペンデントなものづくりを行なってきた両者が、どのようにして海を超えて交わることとなったのか。フィグベルを率いる東野英樹と、レディ ホワイト カンパニー デザイナーのフィリップ・プロイス(以下フィル)の対話から関係性を紐解いていく。
ーお二人が出会ったきっかけを教えてください。
フィル 10年ぐらい前のことですが、何かの雑誌を読んでフィグベルのことを知りました。その後、当時ニューヨークにあったセレクトショップでフィグベルの洋服が取り扱われており、実物を初めて手にしました。生地やデザインはもちろんですが、ほかのブランドだとなかなか凝らないような小さなディテールまで作り込みがされていることに驚き、魅了されていきました。それから日本を訪れるときには、プロッド(中目黒にあるフィグベルのブティック)に足を運ぶようになりました。
東野 フィルがお店に来るようになって、フィグベルのメンバーとすぐに打ち解けていっていました。カットソーの専業ブランドをしているとは聞いていましたが、いわゆるメゾンとは違う僕らみたいな小規模な海外ブランドをあまり知らなかったので、どういうブランドなのかすぐにはわからなかったんです。それからアイテムを実際に手に取って見たのですが、カットソーというシンプルなアイテムの中にブランド哲学がしっかり表現されていて驚きました。ミニマルで洗練されたものづくりやブランディングがされていて、“ロサンゼルスのブランド”という先入観から抱いていたイメージとはいい意味で違いましたね。いわゆるメゾンとは異なる、フィグベルのような規模感と感覚でものづくりをしているブランドが海外にもあるのだと知って嬉しかったです。
ーコラボレーションはどのように進んでいきましたか?
フィル いつか何かを一緒にしたいとは思っていましたが、フィグベルは業界の大先輩なのでまさかコラボレーションできるとは思ってもいませんでした。だから今回はとても光栄でした。東野さんとは今回のコラボレーションを通して深く関わっていきましたが、フィグベルの服から思い描いていた通りの方だと確信していきました。服に関する知識はもちろんですが、それ以外の趣味嗜好やセンスにも共感できる部分が多く、言語の壁をあまり気にすることなくコミュニケーションを取ることができました。
東野 僕がフィルに抱いている印象も同じですね。僕は英語を話せないのですが、彼とは感覚が本当に近いと感じています。例えば打ち合わせをしていたときに、服作りに対する感覚的なことを僕が話そう思っていたら、フィルが先に「この部分の微差はこうするのが良さそうですがどうですか。こっちはこういう風に」と僕が思っていたことと全く同じ意見を言ってきたんです。驚きと同時にすごく嬉しかったですね。「あ、フィルとは感覚が近いな!」って。だから「そうだよね、わかるわかる」というやり取りが続き、共同での服作りをしやすかったですね。きちんと構築されたコラボレーションになったと思います。
フィル 無理のないペースで作り込んでいき、納得のできるコレクションにまとめることができました。レディ ホワイト カンパニーにとっても、フィグベルにとっても、お互いのブランドとしてちょうどいいタイミングで発表することができそうです。フィグベルチームにはとても感謝しています。
ーフィグベルはこの規模のコラボレーションをするのは初めてですよね?
東野 そうですね。ブランドを初めて20年近く経ちましたが、自分たちがしたいことや進むべき方向性が少しずつ固まってきた感覚があります。まだまだ模索している部分もありますが、それはものづくりをする上でずっと続くことです。だから20年の節目として新たなステップを踏むために、初めてのコラボレーションとしてミドリカワとブーツを作ったのが2023年のことですね。2024年はこうしてレディ ホワイト カンパニーとコラボレーションすることとなりました。彼らはカットソーのブランドであり、フィグベルはトータルのファッションブランドなので、同じ土俵ではあっても違うセクションにいるから成立したのだと思っています。だからこうしてカプセルコレクションとして8品番を作ったことは、フィグベルにとっても新たな試みになりました。
フィル 実現したいアイディアを提案することにすごくドキドキしましたが、東野さんが見事に落とし込んでいってくれました。
ーコレクションのテーマはありますか?
フィル テーマよりも、ものにフォーカスして進んでいきました。僕が好きなフィグベルのアイテムを引き合いにして、レディ ホワイト カンパニーらしさを加えていく流れでした。
東野 うちはトータルで洋服を作っていて、フィルたちはカットソーをメインに作っています。そこで考えたのは、例えばフィルたちが好きなとあるスポーツブランドのアイテムをいくつか出してもらって、「じゃあその要素をセットアップとして提案すると面白いかもね」というアイディアの膨らませ方をしていきました。
フィル お互いのインラインではあまり見られないものを作りたいと思いました。僕が持っていたヴィンテージのスキージャケットの要素を組み込んでもらったりもしましたね。
東野 先ほど話したセットアップをベースに、ニットシャツや帽子、靴などアイテムを増やしていって、トータルコーディネートを2つ作れるラインナップを目指しました。トラックスーツも作りましたが、フィグベルのインラインとしてはあまりイメージのないものです。でもレディ ホワイト カンパニーのブランドイメージを感じられるアイテムなので、コラボレーションとして作ることでフィグベルの幅を広げることができました。
ー今回加えたレディ ホワイト カンパニーらしさをもう少し教えてください。
フィル スポーティー要素を入れることですね。フィグベルはワークやミリタリーの要素が強いですが、スポーティー要素を足すとどう化学反応が起こるかが楽しみでした。例えば今回のコレクションにあるウールのジップアップや、セットアップのシルエットに特に表れています。ビーニーの形やブーツのライニングの色にもスポーティーさや今まで制作してきたアイテムの要素を加え、レディ ホワイト カンパニーらしさを表現しました。最後は東野さんがバランスをまとめていってくれました。
東野 僕が想像していた以上に、フィルはシルエットに対して強いこだわりを持っていました。最後まで細かく要素を分解して突き詰めてくれたので、本当にものづくりが好きなんだなと改めて感じましたね。
フィル 大切なのは、多くを語らずとも、生地や洋服の作りからメッセージが伝わることです。そのためには生地やパターンには徹底的にこだわります。レディ ホワイト カンパニーはカットソーをメインにしています。もっともベーシックな洋服だからこそ、なるべくシンプルで無駄を削ぎ落としたものであるべきだと考えています。その上で自分たちらしさを出すために、ディテールに日々こだわっているのです。
ーカラーは黒のモノトーンとなっていますね。
東野 フィグベルが以前リリースした墨黒カラーのジャケットがあるのですが、フィルがすごく気に入ってくれていて。うちは単純な真っ黒ではなく、絶妙にフェードした墨黒を作っています。その曖昧な黒をフィルは好意的に見てくれていたのだと思います。カプセルコレクションとして8品番に厳選する上でも、1色に絞る方がコンセプトとしてもトータルコーディネートとしても強さが出ると考えました。
フィル お互いのインラインアイテムで黒だけで展開しているものがあまりないため、とても貴重ですね。
ー9月28日(土)の発売に向けて、1日限定のローンチイベントも開催されるのですね。
東野 フィルたちとの繋がりから生まれたこのコレクションを、作って終わりにはしたくなかったんです。だから日本で撮影チームを組んで、彼らがいるロサンゼルスでビジュアル撮影もしました。それらのパズルのピースの最後の1つとしてローンチイベントを開催することで、お客さんの顔を見ながらアイテムを届けることができる。そうすることで、繋がりを大切したこのプロジェクトが完成するのです。
フィル 今回のアイテムを実際に着てくれるお客さんと会えることがとても楽しみです。フィグベルとレディ ホワイト カンパニーのそれぞれのお客さんや国境を越えた卸先店舗が繋がることで、また何か新しいことが起きるといいなと思っています。
ブランドがコラボレーションするということは、マーケティングの計算から弾き出された組み合わせではなく、東野とフィルのようにブランドを率いる中の人間の関係性のもとに行われることがもっとも自然で完成度の高いものになるのだと再認識した。フィルは東野のことを「トウノサン」と呼んでリスペクトを表し、対して東野も「近い感覚を持った人と言語を超えて繋がれたことが嬉しかった」と話す。そうして生まれたこのコレクションは、フィグベルとレディ ホワイト カンパニーのそれぞれのファンにこそ手に取ってほしい、インラインとはまた違う特別なアイテムとなっている。ローンチイベントではフィルたちも来日し、商品の発売に加えてビジュアルの公開やノベルティ配布もあるようだ。ぜひ足を運び、新たな繋がりを探してみてはどうだろうか。
▼イベント情報
日時:9月28日(土) 12:00-20:00
場所:東京都目黒区青葉台2-17-10 1F PROD tokyo
日時:9月29日(日) 12:00-20:00
場所:石川県金沢市竪町107-3 3F PROD kanazawa
東野英樹
2002年にフィグベルを立ち上げる。「New Classic」をコンセプトに掲げ、ワークウエアやミリタリーウエア、アメリカンカジュアルなどヘリテージなアイテムを再解釈したものづくりを行う。
Instagram:https://www.instagram.com/phigvel_makers_co/
WEB:http://phigvelers.com/
フィリップ・プロイス
2015年にロサンゼルスでレディ ホワイト カンパニーをスタートさせる。ジャージー素材のTシャツやフリースをベースに、アメリカの古き良き美学に影響を受けたものづくりを行う。
Instagram:https://www.instagram.com/ladywhite_co/
WEB:https://ladywhiteco.com/
Photo Taro Mizutani Photo (Portrait of Tohno) Yusuke Abe Photo (Portrait of Phillip) Lady White Co. | Styling Dai Ishii | Interview & Text Yutaro Okamoto |