TAKU (Hair Stylist)

ヘアスタイリスト TAKUが考える 時を超えて継承する腕時計

Santos by Cartier
今回紹介してもらった4本の中で最初に購入したというサントス ドゥ カルティエ。世界初の男性用腕時計として知られており、飛行家であるアルベルト・サントス=デュモンが操縦桿から手を離さずに時間の確認が可能な時計をルイ・カルティエに依頼したことから完成した本作。飛行機のボディをつなぐネジからインスピレーションを得たデザインなど男心をくすぐるヒストリーが詰まった1本。TAKUもそんなストーリーに惹かれ購入を決意したそう。

90年代よりロンドンで活動を開始し、雑誌や広告で活躍。帰国後もファッション誌からセレブリティまでをも魅了するヘアスタイリストTAKU。独自の審美眼と繊細な手仕事により、人々の美しさを引き出してきた彼の時計選びの美学について聞いた。「僕にとって腕時計は武器なんです。オフの日は時間を気にしたくないので時計も指輪も何もつけないのですが、外に出て仕事をする時には必ず時計と指輪をつける。手を使う仕事だからこそ指や腕に感じる重さが気持ちをオンにさせてくれるんです。熱心なコレクターではないから何十本も時計は必要ない。元々はヴィンテージのロレックスやハミルトンなども所有していましたが、今は自分の趣味に合っていて、本当に良いと思える4本で充分。日々の時計選びで迷いたくないのでTシャツにジーンズ、スーツにも合わせられ、自分のスタイルに合う腕時計を厳選しています」。

Clockwise from top
Aquanaut by Patek Philippe
Cut by Hermès
Santos by Cartier
Golden Ellipse by Patek Philippe

自然に厳選されていったという4本はシンプルなデザインにゴールドのアクセントとレザー or ラバーバンドが特徴。どんなスタイルにも合わせやすいことはもちろんのこと、ラバーバンドは汗をかきやすい現場でもつけることができるため重宝しているそう。
新品の腕時計のみを選ぶ理由

自身のスタイルに合い、本当に良いものを厳選する。TAKUの腕時計の選び方には彼の美意識が現れていると言えるだろう。そんな彼にはもうひとつ、“新品の腕時計しか買わない”という哲学がある。そこには彼なりの腕時計に対する考え方が込められていた。「父親が亡くなった時にオメガのシーマスターを残してくれたんです。僕には息子が2人いるのですが、ふと“彼らに残せるものはなんだろう”、と考えた時に、自分の父がそうだったように時計を残したいと思ったんです。もちろんヴィンテージも好きなので所有していた時期もあったのですが、誰の手にも触れていない時計を自分が身につけ、息子へと継承していく、そのストーリーが自分の中で腕時計を所有する理由のひとつになりました。それからは、新品しか買わないようにしています。元々“ゴールデンエリプス”と“サントス”、“エルメスカット”は持っていたのですが、“パテックフィリップ アクアノート”の新作が出ると知って手に入れたいと思ったんです。ただ、人気が高く生産数も少ないモデルなので誰でも買えるわけではない。ダメもとで店員さんに購入したい意志を伝えると1週間後に『ご用意ができました』と連絡があり、手に入れることができました。運と縁がないと良い腕時計は所有できない。そんな感覚を味わった瞬間でした。今手持ちの4本は、自分が心地良く着けられる新品の腕時計で、息子たちに受け継ぐ価値のあるもの。彼らに同じように時を刻んでいって欲しい。そんな思いを持って長年の中で自然と選び残った、僕にとっての腕時計の最適解なのです。

TAKU
1997年に渡英後、i-DやTHE FACEといった第一線のファッションカルチャー誌のヘアスタイリストとして活躍。2005年に帰国後も雑誌やブランドビジュアル、セレブリティのヘアを行うほか、サロン「CUTTERS」をオープンするなど美容師としても活動している。

Photo    Asuka ItoText & Edit    Katsuya Kondo

Related Articles