UNION

“ローカル”であり続ける 進化しても変わらない哲学

ユニオン ロサンゼルスのショップ前にてクリスと映るのはショップスタッフたち。ロサンゼルスならではのリラックスしたスタイルがユニオンらしい。
ローカルを大切にしながら
新しく変化し続けるショップ

ストリートファッションの歴史において最も重要なショップといえばユニオンをおいてほかにないだろう。東京と大阪にもあるセレクトショップのユニオンだが、現在の拠点はここロサンゼルスだ。歴史を遡れば1989年にニューヨークで後にシュプリームの創設者として知られるジェームズ・ジェビアとそのパートナーであるマリー・アン・フェスコによってオープンしたユニオン。まだストリートファッションという言葉がない時代から、当時は西海岸でしか買えなかったステューシーをはじめとしたインディペンデントなブランドをいち早く紹介し、瞬く間に話題の店となり、今に続くストリートファッションシーンの礎を作った。その創業当初からショップスタッフとして働いていた人物こそが、今のユニオンを率いるクリス・ギブス(写真中央)だ。ロサンゼルス特集を行うにあたって、決して外すことのできないファッション、カルチャーの中心地であるユニオンの今をクリスに聞いた。

アイデンティティを
発見することができる店

今でこそ、ハイファッションとストリートファッションを組み合わせたスタイルを提案するお店は当たり前になったが、ユニオンはその源流であると言える。改めて、今のユニオンはどういったお店のあり方を意識してディレクションしているのか聞くと、クリスはこう答える。
「ユニオンのお店を一言で例えれば、多様なクローゼットであると自分たちは思っています。徹底的にキュレーションをして選んできたものがユニオンというクローゼットには揃っている。だから、ハイファッションもあればストリートファッションもある。お店に来てくれるお客さんがこの多様なクローゼットの中から自分の好きなものを選んで着る、そんなお店だと思っています。お客さんの中には、自分のアイデンティティを確立していて何を着れば良いのかわかっている人もいれば、ファッションに興味を持ち始めたばかりの若い世代もいる。僕たちは、ファッションというのは自己表現の一つの手段であると思っています。例えば、今日の僕のスタイルを見て何を着ているかで趣味趣向を判断するでしょう。今日はピンクのジャケットを着ていますが、派手な色を使うことに抵抗がない人であるという印象を持つ人もいれば、裾をカットオフしたジャケットを見て真面目すぎない印象を持つ人もいると思う。身につけるものにはそういった自分の個性を演出してくれる役割があります。ユニオンに来ることで、自分のアイデンティティを洋服を通して発見することができる、そんな旅のようなお店を心がけています」。

お店があるのは、ロサンゼルスの中でもファッションブティックや洗練された飲食店が立ち並ぶラ・ブレア通り。2001年にロサンゼルスにユニオンがオープンしてから変わらずこの場所にこだわり拠点を構えてきた。全てはローカルなコミュニティを大切にしたいという思いによるものだ。
「元々、ユニオンはローカルの口コミで広まって発展しました。決して商品を売る場だけではなくて社交の場として人と人が出会ったり情報交換できるようなお店です。だから、とにかく“ローカル”なお店という姿勢はユニオンの軸にあるんです」。クリスがそう話すように、ユニオンが地域性や社交の場としてのあり方を大切にしていることは東京の店舗にも表れている。原宿の中心部から少し離れたエリアに立地し、お店の中には何人かで腰掛けるのにちょうど良いソファーや椅子が置かれている。これも、クリスが意図して置いたもので、「ただ座ってくつろいでもらったり、会話の中で何かが生まれたりするようなお店であってほしいから」であるという。

オリジナルブランド“ユニオン オリジナル”をはじめ、ハイブランドやストリートブランドを独自の視点でミックスして提案。クリスが「クローゼットのような」と表すように今、着たい服が見つかる、そんなラインナップになっている。
セレクトのユニオンから
オリジナルの発展へ

ユニオン ロサンゼルスの店内には、ボーディーやネイバーフッド、ビズビム、ナイキ、ジル・サンダーやマルニなどネームバリュー問わず世界中から集められた選りすぐりのブランドがセレクトされている。ここに名前を挙げたほかにも多数の日本のブランドが多いのだが、それはクリスの比類なきジャパニーズストリートウエアに対する偏愛によるものだ。日本のストリートファッションブランドが盛り上がっていた2000年代初期は、クリスもショップスタッフからディレクションに携わるようになった時期と重なり、自然とフックアップするようになっていったという。「正直によるアメリカの服やカルチャーの捉え方がすごくウィットに富んでいてすごく好きなんです。最近、日本で買ったもので言うと、裾をカットオフしたフィッシュテールパーカ。フィッシュテールパーカは裾が一番のポイントなのに、それを切ってしまうアイディアが面白いと思った。日本のものづくりの部分ももちろん魅力なんですが、僕にとってはそういったクラシックなものを再構築するアイディアが好きなんです」。
話題が日本のファッションとなるとクリスの言葉も熱を帯びてくる。ユニオンロサンゼルスのお店に日本のブランドが多い理由は、深く聞かずとも納得である。そんな、クリスやバイイングチームによるこだわりのセレクトが魅力のショップとして知られるユニオンだが、今、新しい道へ方向転換をしている最中だとクリスはいう。2017年秋冬から開始したオリジナルブランド“ユニオンオリジナル”の発展だ。「ユニオンに来てくれるお客さんがどういうものを欲しいと思っているのか、日々の接客の中で足りていない要素が段々と見えてきたんです。その蓄積した知識を商品にできれば、お客さんに喜んでもらえる良いものが作れるんじゃないか、もっと良いクローゼットになるんじゃないかと思って生み出したのがユニオンオリジナルです。自分たちもEコマースをやっているけれど、やっぱりお店での出会いを大切にしてもらいたい。インターネットやSNSが進んで、新しいものが発売した日にお店に行かなくてもすぐ買えてしまう時代に、セレクトしたブランドだけではなく、自分たちだけのオリジナルを持つ必要がありました」。

ユニオンのオフィスは大きな倉庫のような空間。商品の在庫を管理するスペースはとても広く、セレクトの豊富さに驚かされる。

8月に発売されるというJordanとのコラボレーションは、クリスと妻のベス(ウィメンズブランドBephie主宰)がアイディアとデザインを考案。ジョーダン1とエアフットスケープを組み合わせたようなデザインが特徴。

デザインルーム内にあるクリスのデスク。

今回の取材では、お店だけではなくユニオンのオフィスにも招待してもらったが、そこでは商品を管理する倉庫のほかに撮影のできるスタジオやユニオンオリジナルやムみんなでデザインを行っていく。お店を大切にしているユニオンだからこそ、ものづくりにおいてお店に置いた時のことを大切にするため制作は、デザインチームだけではなくバイイングチームやショップスタッフ全員で相談をしながら進めていくという。
これだけデジタル化が進んでも、ローカルなコミュニケーションを大切にするユニオン。「コロナウィルスでのロックダウンやデジタルの普及で、実際の店舗は昔に比べて厳しくなったけど、ラ・ブレア通りにユニオンがある景色やこのコミュニティは変えたくない」。その熱い思いに、NYCで創業した時代から脈々と受け継がれる、“自分たちでオリジナルを生み出していく”というDNAを感じた。

UNION TOKYO
https://www.uniontokyo.jp/

UNION LOS ANGELES
https://store.unionlosangeles.com/

Photo Ryuta HironagaTranslate Aya Muto
Coordinate Daiki Fukuoka
Interview & Text Takayasu Yamada

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