ART & CRAFTS 3D collage TOMOO NISHIDATE

音楽を意識することで生まれる リズミカルな立体コラージュ

L to R
Width 103mm Height 290mm Diameter 95mm
Width 84mm Height 324mm Diameter 83mm
Width 85mm Height 349mm Diameter 74mm
意味や機能よりも先に
かっこよさを突き詰める

鉄骨のような重厚感がありながら、プラスティックのようなニュートラルさも感じる幾何学的な作品。実はこれ、家具の端材を集めて組み立てた立体コラージュだ。手掛けたのは千葉県を拠点に活動する作家、西舘 朋央。「意味や機能を考えるよりも先に、 まずはかっこいいと思えるものを作りたい」と彼は話す。そんな西舘の作品に反応し、展示会に足を運んで作品を即購入したのが本連載のナビゲーターである南貴之だ。南は西舘の作品をこう評する。「西舘さんの作品を最初に目にしたのはインスタグラムでした。写真から見る限りだと一体何の素材なのか全くわからなかったんです。鉄を焼き付けて塗装しているのか、または塗料を上から塗っているのかと想像していました。素朴でありつつ謎に満ちた彫刻で惹かれていました。そこで西舘さんの展示会にお邪魔して実物を拝見したのですが、『木材の廃材や切れ端を組み合わせている』と聞いて脳みそが揉みほぐされるような感覚になりました。工芸的なアプローチで木材の風合いを引き出す作家は多いですが、逆に塗装しているという西舘さんの発想には驚かされましたね。工芸でもアートでもない、新時代のアプローチなのではないでしょうか(南)」。
クリエイティブディレクターとして新たな視点の提示やものづくりを行なってきた南だが、そんな南さえも驚かせた西舘の制作アプローチ。テーブルや椅子を始めとした木材家具の端材を集め、それらを即興的に組み上げていくという。「昔、イギリスへ旅行したときに、路上に落ちていた新聞や雑誌、ライターなどを拾い集めてノートに貼り付けたスクラップブックのようなコラージュしたことが現在の作家活動の始まりです。その制作を進める中で気がついたのは、素材自体が持っているテクスチャーやボリューム、形、そしてストーリー性に自分は惹かれているということでした。だから作品は紙の貼り重ねからどんどん立体感や物体性が強まっていき、今では素材に家具の端材を使うようになりました。僕がかっこいいと感じる端材の一つ一つをパズルのピースのように組み立てていくんです。家具の名残を感じさせる取手や穴のディテール、そして木材自体のテクスチャーを組み合わせて新たな形やボリューム、ストーリーを作ることが面白いんです(西舘)」。

端材が持つ自然で不規則な形やテクスチャーに西舘が面白みを感じて制作しているシリーズ。木材のテクスチャーを活かしつつ、塗装したフラットなテクスチャーや細いパーツを差し込んでニュートラルさとノイズのバランスを保っている。楽譜や一曲の世界観が詰まったようにも見える、西舘のバックグラウンドにある音楽カルチャーが伝わる作品。
音楽を作るように
テンポやアクセントを意識する

端材を組み合わせて複雑な形を作りつつ、それを一色でフラットに塗り潰すことで平面的でグラフィカルな印象を与えている西舘の作品。立体としてのシャープさやノイズ、それと平面的なニュートラルさのバランスを意識しているという。彼の作品を目にして感じたのは、凹凸のリズミカルさやビート感、スピーカーのように音を発しているかのようなイメージだった。取材を進める中で、それは西舘のバックグラウンドの影響が大きいと知ることができた。「10代の頃からドラムを叩いていて、ジャズファンクのバンドを組んでいました。その後は作曲や音響効果の仕事をしていたんです。音楽作りはテンポやアクセントを意識しますが、そのリズム感を持ってコラージュ制作もすぐに形を組み立てることができました。間や目立たせたい部分のメリハリ、全体としてのまとまりを曲作りの感覚から応用しているのだと思います。作品の素材となる端材はフラットなものから尖ったものまでさまざまなので、それらを一つの曲のようにどうまとめるかを考えていますね。サンプリングのような感覚かもしれません(西舘)」。

TOMOO NISHIDATE
https://tomoonishidate.com/

西舘朋央
工場や工房で生じる端材や使用が済んで捨てられた紙片や木材などを用い、コラージュや立体作品を制作。グラフィックデザインやディスプレイ制作、空間演出など様々な領域でも活動。

南貴之
アパレルブランドのグラフペーパーやフレッシュサービス、ギャラリー白紙など幅広いプロジェクトを手掛ける。「墨」をテーマにしたグラフペーパー24SSのコレクションラインも必見。

Select Takayuki MinamiPhoto Masayuki NakayaInterview & Text Yutaro Okamoto

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