The Weight of Time Yasuhiro Watanabe (Stylist)
スタイルを持つ人に聞く 人生をともにしてきたレザー

and J&M Davidson
渡邉康裕
ベルトは装いの核となるメインディッシュだと語るのはスタイリストの渡邉康裕。200本以上集めてきたというレザーベルトのなかでも、選りすぐりのピースを覗かせてもらった。「ベルトというのは、自分のなかでは単にパンツを留めるものではありません。ベルトが決まらないとその日のスタイルが決まらない。アウターを選ぶのと違いはなく、漬物ではなくてメインディッシュと同等なんです。引いて見ると変わりませんが、身につけている自分にとっては、その日のチョイスひとつで全体のレベルが変わる。そのくらい面白いポジションなんです。例えばこのジェイエム・ダヴィッドソンのメッシュレザーベルト。僕はあえて一番長いものを買います。メッシュだと落ち感が出るのでベルトの先をしなやかに垂らせるんです。そしてこのテンダーロインのスタッズベルトですが、毎日のように履くデニムとの相性も良くて、最近また身につけるようになりましたね。手に入れたのは20年以上前ですが、ファッションには揺り戻しがあるので。エルメスのレザーベルトも、馬具に使っていた金具だったりと、革屋が作るベルトとしての背景がしっかりあります。デニムとの相性もすごくいい。オンスがしっかりあって、厚みもある。撮影の際に使用する時も、着用する人物に合わせ穴を開けることが多いのですが、傷がついても全く気にしませんし、逆に表情が増していいんです。自分自身のライフスタイルとして、実用的であることは絶対的に担保しないといけませんからね」。

レザーという素材の根本的なタフさに宿るのは、機能に裏打ちされた無骨な美しさとふとした瞬間に覗く大人の遊び心だと渡邉は話す。「レザーの魅力はやはり素材としての物理的なタフさだと思います。それはレザーでなければ表現できない。長く使えるという結果論よりも、日常的にガシガシ使えるタフさが最低限の基準ですね。それに、要所にレザーを持ってくると単純にスタイルが締まる。レザーベルトもレザーシューズもそうですが、個体ごとに顔つきが違います。このベルト一本にどのようなストーリーが詰まっているのか、ちょっとしたロマンを感じますよね。オシャレだね、じゃなくて洒落てるねという言葉がすごく好きで、ベルトは表舞台に出てくるかわからない控えめな存在ですが、腰をキュッと締める所作や、見えないところへの気遣いに男の色気があると思う。最後を締める、仕上げの部分。ベルトに気を使ってない人は意外と多いですが、僕は今日このベルトをするからこれを着よう、みたいな着方をする。そういう男のたしなみが、一番面白いのではないでしょうか」。
渡邉が選ぶレザーベルトには、時の試練に耐えうる道具としての強さが垣間見える。その腰元に巻かれた一本もまた、語らずとも彼の生き様を映し出しているかのようだ。

渡邉康裕
90年代よりキャリアをスタートさせ、四半世紀以上にわたり日本のファッションシーンを牽引し続ける。近年はブランディングやディレクションにも傾注する日本を代表するスタイリスト。
| Photo Masato Kawamura | Interview & Text Samuel Pattison | Edit Yutaro Okamoto Samuel Pattison |












