Places of Comfort & Chic

自然のなかでTPOの大切さを学ぶ 東野英樹が通うマナーハウス

“Comfort”で“Chic”な場所とはどんな場所だろう?心地の良い音楽とゆったりした時間が流れるカフェ?歴史と情緒にあふれた宿?センスある作品を目にできる美術館?答えは人の数だけあるだろうが、それらはいずれも訪れたものの気持ちを豊かにしてくれる場所に違いない。時代のムードが変わり、豊かさ、贅沢の基準も変わってきた。高級ホテルやレストランなど、いわゆる“ラグジュアリー”とは違う心の贅沢。豊かな時間を過ごせる場所。ここからはそんな場所について、ファッションの第一線で活躍する6人のクリエイターに語ってもらった。彼らにインスピレーションを与える7つの場所は、我々をも大いに刺激してくれることだろう。

道東と呼ばれるエリアの大自然の中に佇むヘイゼルグラウスマナー。既存の建物を移築するのではなく、オーナー自身のこだわりによってゼロから作り上げられたというこの場所は、中世貴族の趣を感じるクラシックな内装が心地よい。スタッフ3名と猫1匹で運営しており、来客数も限っているとのことで、落ち着いた時間を過ごすことができる。屋外では乗馬、ハンティング、カヌーなど、中世貴族も楽しんだ本場さながらのアクティビティを楽しむことができる。
HAZEL GROUSE MANOR (Hokkaido)
Selected by Hideki Tohno (PHIGVEL)
普段と異なる環境が
新たな刺激を与えてくれる
東野英樹

「去年の夏、趣味のフライフィッシングを楽しむために妻と二人で北海道に行ったのですが、そこで滞在したのがこのヘイゼルグラウスマナーです。敷地の中の細い木立の道を進むと、開けた場所にクラシックな洋館と納屋がポツンと建っているのですが、その景色がとても素敵でまるで海外に来たような感覚でした。ただただ静かで豊かな自然の中で釣り、カヌー、乗馬やハンティングなど様々なアクティビティも楽しめます。マナーハウスとはヨーロッパの中世貴族や名士達が趣味を楽しむ別荘のようなものなのですが、それが北海道にあることにまず興味をそそられました。マナーハウスの本場イギリスで、ハンティングなどを嗜んでいたオーナーが、日本で本気のマナーハウスを作りたいと思って始められた場所とのことです。中に入ると、暖炉のあるまさにクラシカルな内装で、異空間だけど環境と相まってとても心地良い。要所要所にハンティングやフライフィッシングに関連した絵画や道具などが飾られていて、オーナーの嗜好も感じます。お客さんがたまたま僕たちしかいなかったこともありますが、そんな異空間で食事などをサーブしてもらえるのは贅沢で不思議な感覚でした。食事は地元の食材を使って作られたフレンチのコースのみ。なのでTシャツではなく正装で。併設されたバーでは、この建物が出来るまでの話から狩猟の話まで、支配人の興味深い様々な話も堪能。北海道の大自然の洋館という異空間の中、“何もしない贅沢”と“TPOを楽しむ”という異なるテイストが味わえてとても良かったです。もう少し緊張感のある場所かと思っていましたが、すごくリラックス出来ました。フィッシング目的でしたが、きちんとした場所で食事するためにはちゃんとしたシャツも必要という思考にもなりました。この歳で改めてTPOの良さを感じられましたし、こんな場所を作られたオーナーと、守り続けていらっしゃる支配人に感銘を受けました。ただ静かに過ごすだけではなく、アクティビティも体感できて非日常にも身を置ける場所が出来たので、今年も楽しみです」。

ヘイゼルグラウスマナー
北海道川上郡標茶町虹別65-116-1 015-488-3888

東野英樹
「New Classic」をコンセプトにワークやミリタリーをはじめとしたカルチャーの本質を見極め、再解釈したアイテムを生み出し続けるフィグベルのデザイナー。フライフィッシングを趣味とし、日本中の多くの川へ出かけ、竿を振るっている。

Edit & Text Satoru Komura

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