Car with Style by Fumio Ogawa MINI COOPER by Enzo Ferrari
ストーリーを持ったスタイルある車 世界一の自動車人が愛した車 ミニー・クーパー
「ストーリーを持ったスタイルある車」と題し、人と車に焦点を当て、スタイルを解き明かす本企画。すぐに着替えることのできる洋服と違い、車はすぐにアップデートができない。そこにはよりその人らしさが見えてくるのではないだろうか。歴史的な偉人たちと、彼らの愛車の関係をライター・小川フミオとイラストから紐解いていく。

自動車人にはクルマ好きが多い。自動車人って、ヘンな言葉に思えるかもしれないが、クルマづくりを生業にしているひとのことを言う。たとえば、トヨタ自動車の豊田章男会長も、日本を代表する自動車人。
自動車史において、過去にもっとも名の知られた自動車人といえば、フェラーリの創業者、エンツォ・フェラーリをまっさきに挙げる自動車好きは少なくないだろう。日本でも公開されたマイクル・マン監督作品「フェラーリ」(2023年)など、このひとを採り上げた作品は多い。
なにがエンツォ・フェラーリを神格化したかというと、もちろん、クルマへの情熱。しかも、レースへの情熱だ。いまルイス・ハミルトンとシャルル・ルクレールというドライバーを抱えるスクデリア・フェラーリ。1950年からF1に参戦している、もっとも歴史あるレーシングチームだ。
フェラーリが送り出すスポーツカーの数々は、高性能と審美性と希少価値でもって世界中のクルマ好きの垂涎の的でありつづけている。が、エンツォ・フェラーリはつねに、クルマを売るのはレース資金をかせぐため、というポリシーを持ち続けていた。
そんなエンツォ・フェラーリが愛していたクルマはなんだろう。先に触れた映画では、彼に扮したアダム・ドライバーが、フランスの大衆車プジョー403(1955ー66年)を運転している。
エンツォ・フェラーリのような、元レーシングドライバーでアルファロメオのグランプリマシンを操縦していて、世界屈指のレーシングチームをひきいて、誰もが欲しがるスポーツカーを作る会社のオーナーが、フツウのセダンを日常使いしているというギャップは、かなりよい。高いクルマで箔を付けるのと正反対。自分に自信があるからこそ出来ることだ。
エンツォ・フェラーリにとってプジョーは“足グルマ”だったかもしれないが、かなり気に入っていたといわれるのが、英国のミニだ。何台も買い替えている。
とくにミニのなかでも、高性能のミニ・クーパーが好きで、1100Sや1300Sを自分のクルマとして購入。1300Sはそもそも速いクルマだが、エンツォ・フェラーリはさらにエンジンをチューンナップし、時速95マイルが出せるようにしていた、とMINIのホームページに記載がある。
MINIは、稀代の自動車人エンツォ・フェラーリに愛されていたのが嬉しかったようだ。そりゃ、そうだろう。想像に難くない。
興味深いのは、色へのこだわり。ミニ・クーパー1300Sは赤色で納車されたが、「赤はフェラーリにのみ許された色」と、グレイに塗り替えてしまったそうだ。赤っていっても、フェラーリの赤色とは違うだけに、クルマをわざわざイタリアまで届けに行った、ミニの伝説的設計者アレック・イシゴニスもびっくりしたのではなかろうか。
小川フミオ
自動車誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を経て、現在はフリーランスのジャーナリストとして活躍中。雑誌やウェブなど寄稿媒体多数。












