The Classic Shoes Edward Green
革から仕上げまで 貫かれる美学
「安い靴を4足買うより、良い靴を1足買いなさい」という言葉を、イギリスの名優ケイリー・グラントは残した。ジェームズ・ボンドのモデルにもなった稀代の洒落者だ。そしてこう続けている。「上質な革で作られた1足は、質の劣る4足よりも長持ちするだろうし、きちんと手入れをすれば、どれだけ年月が経っても、あなたの優れたセンスと判断力を物語り続けるだろう」。流行を追いかける靴ではなく、履く人と一緒に時間を重ねる靴。それができるのは、やはり長い歴史に磨かれてきた名門シューズブランドの靴たちだ。

Shoes ¥245300 by EDWARD GREEN (STRASBURGO) Jacket ¥429000 by HARRY MUNDY (TOD) Long Sleeve T-Shirt ¥21890 [Vintage] (Side Car Charlie) Denim Pants ¥44000 [Vintage] (STEP AHEAD HARAJUKU) Belt ¥121000 by KINGSLEY WALTERS STUDIO × Godard Haberdashery (TOD) Other Items [Stylist’s Own]

きちっとしたストレートチップに、華やかな装飾を組み合わせたフルブローグ仕様の“CADOGAN”。つま先を彩るメダリオンや、縁に施されたギンピングなどの遊び心が、この伝統的な一足にキャラクターを与えている。アッパーのパターンから靴全体のフォルムまで美しく、見入れば見入るほどしっくりとくる絶妙なバランス。“202”ラストによる柔らかな丸みを帯びたつま先も、その完成されたプロポーションを際立たせてくれている。
Shoes ¥257400 by EDWARD GREEN (STRASBURGO)

本当に良いレザーシューズは、長い年月を経ても古くならない。だが、それは同じものを変わらずつくり続けているからというわけではない。その時代によって変化する服装やライフスタイル、そして人々の美意識を理解しながら、細かな部分を少しずつ磨き続けているからこそ、一足の靴は長い時間のなかでその存在感を失わないのである。1890年に英国のノーサンプトンで創業したエドワード グリーンは、まさにそんな進化を続けてきたシューメーカーである。創業者エドワード グリーンが靴の世界に入ったのは、わずか12歳のときだった。彼が最初に携わったのは、靴のアッパーとなる革を裁断する「クリッカー」の仕事だ。革を裁断するナイフが木の上で鳴らす音が、その名前の由来とされている。一足の靴を完成させるまでに数多く存在する工程のひとつからキャリアを始めたグリーンは、そこで靴づくりへの情熱を深めていった。そして1890年、ノーサンプトンに自身の工房を設立することとなる。創業当初から彼が大切にしていた言葉は「Excellence Without Compromise」。妥協なき卓越性だった。技術に優れた職人を集め、最高級の素材だけを使い、手間を惜しまず靴づくりに専念する。その姿勢は次第にブランドの評判を高め、やがてアーネスト・ヘミングウェイやウィンザー公エドワードといった著名人たちを顧客に持つまでになった。しかし、エドワード グリーンの魅力は、単に伝統的な英国靴を守ってきたことだけではない。ブランドの靴づくりを支えているのは、素材とフォルムへの徹底した意識だ。フランスやイタリアから選び抜かれた上質なカーフは、職人の手によって一枚ずつ裁断され、靴として少しずつ組み上げられていく。さらに特徴的なのが、革の表情を引き出す仕上げだ。深みのあるブラウンや独特のグラデーションを生み出すアンティーク仕上げは、履き込むことで変化していくレザーの魅力をより際立たせてくれる。見栄えが均一であることよりも、革そのものが持つ表情を生かす。その考え方が、エドワード グリーンの靴に独自の魅力を与えているのだ。靴の印象を決定づけるラストにも、その美意識は表れている。端正でクラシックな「202」から、シャープで彫刻的な表情を持つ「890」まで、それぞれ異なるフォルムを持つラスト。同じオックスフォードシューズであっても、ラストが変わればその印象は大きく変化する。フォーマルにも、コンテンポラリーにも見せられるのは、エドワード グリーンが長い時間をかけて磨いてきた、この繊細なバランスがあるからだろう。そのスタンスは、時代とともに変化する人々の装いへの向き合い方にも反映されている。1980年代以降、ブランドはヨーロッパ的な感覚を取り入れながら、ブラウンシューズやアンティーク仕上げの表現をさらに広げていった。過去のスタイルをただ保存するのではなく、英国靴が持つ本質を残しながら、新しい時代にふさわしい姿へと少しずつ更新していったのだ。これまでにエドワード グリーンが追求してきたことは、伝統を守るために変わらないことではなく、より良いものへと磨き続けることなのかもしれない。英国靴のレガシーを受け継ぎながらも、素材やラスト、そして最後の仕上げまで、履く人のスタイルを見つめ続ける。100年以上前に掲げられた「妥協なき卓越性」という言葉は、現在も完成形を意味するものではなく、より美しく、より快適に、より現代のスタイルに馴染む一足へ、というメッセージが込められているように感じる。そんな彼らの終わりなき追求こそが、エドワード グリーンの靴を今日まで磨き続けているのだ。

Shoes ¥311300 by EDWARD GREEN (STRASBURGO) Jacket ¥550000 Pants ¥79200 by NICENESS (ELIGHT Inc.) Shirt ¥53900 by ENGINEERED GARMENTS Other Items [Stylist’s Own]

最高級のヨーロピアンレザーを贅沢に使用しており、アーモンドトゥにすっきりと仕上がったタッセルローファーの“BELG RAVIA”というモデル。エドワード グリーンを代表する“184”ラストが印象的なのは、足元を美しく見せてくれるスリムな形だ。ヴァンプに揺れるタッセルとサイドに施された編み込みが、シンプルになりがちなローファーに新たな表情を吹き込んでいる。上品で軽やかなちょうど良いバランスこそが、この一足の魅力だ。
Shoes ¥275000 by EDWARD GREEN (STRASBURGO)

| Photo Masato Kawamura Styling Satoshi Kamei | Hair TAKUMI Model Bukwop | Edit Takayasu Yamada Ayuko Hashimoto Samuel Pattison Maki Kinoshita Text Samuel Pattison |












