The Classic Shoes JOHN LOBB
ビスポーク由来の 履き心地と造形美
「安い靴を4足買うより、良い靴を1足買いなさい」という言葉を、イギリスの名優ケイリー・グラントは残した。ジェームズ・ボンドのモデルにもなった稀代の洒落者だ。そしてこう続けている。「上質な革で作られた1足は、質の劣る4足よりも長持ちするだろうし、きちんと手入れをすれば、どれだけ年月が経っても、あなたの優れたセンスと判断力を物語り続けるだろう」。流行を追いかける靴ではなく、履く人と一緒に時間を重ねる靴。それができるのは、やはり長い歴史に磨かれてきた名門シューズブランドの靴たちだ。

Shoes ¥283800 by JOHN LOBB (JOHN LOBB JAPAN) Jacket ¥187000 by JUNYA WATANABE MAN (COMME des GARÇON) Knit ¥32000 by Supreme Denim Pants ¥44000 by Vintage (STEP AHEAD HARAJUKU) Scarf ¥23100 by Vincenzo Miozza (BEAMS F) Other Items [Stylist’s Own]

1997年に登場したシングルバックルのスリッポンシューズを再解釈。シャープな4098からラウンドシェイプの名作、8695ラストに変更し、2023AWに登場。スリッポンながらライニングが入っており、長く履ける仕様となっている。
Shoes ¥352000 by JOHN LOBB (JOHN LOBB JAPAN)


名品という切り口の特集において、その名を見ないことはないほど、憧れの靴として知られるジョンロブ。では、ジョンロブはなぜ名品と呼ばれるのか。その条件を考えると、長く作られていること、最上級の素材や技術が使われていることも大切だが、時間が過ぎても古びることなく、現代でも欲しいと思わせてくれることだろう。ジョンロブの原点にあるのはビスポークだ。顧客の足を測り、その人だけのラストを削り、一足の靴を仕立てる。そんな靴作りによって名声を築いてきたジョンロブは、1976年にエルメスの傘下へ。そして1982年、それまでビスポークで培ってきた美意識や技術を受け継ぎながら、既製靴のコレクションをスタートさせた。これまで顧客一人ひとりのために作ってきた靴を既製靴にするのだから、その決定は大胆な試みだったはずだ。しかし、ジョンロブが目指したのは、ビスポークをただ簡略化することではなかった。そこで培った技術や美意識を、既製靴という異なる形で実現することだった。そして重要なのは、既製靴が誕生したからといって、ビスポークが過去のものになったわけではないことだ。現在もパリのモガドール通りにはジョンロブのビスポークアトリエがあり、顧客一人ひとりの足を採寸し、木製のラストを削り、職人の手によって靴を仕立てている。完成後も顧客のラストは保管され、次の一足を作る時を待つ。ビスポークと既製靴。その両方を現在進行形で作り続けていることも、ジョンロブというブランドを理解するうえで大切なことだろう。現在、既製靴のものづくりの多くを担うのは、英国靴の聖地として知られるノーサンプトンのファクトリー。一足の靴が完成するまでに要するのは、おおよそ190もの工程。革を裁断し、アッパーを縫い、ラストに革を吊り込み、底を付け、磨き上げる。異なる技術を持った職人たちの手から手へと靴が渡り、そこに機械だからこそ可能な精度を組み合わせながら、一足の既製靴ができあがるのだ。素材の選び方にも、その思想は表れている。ジョンロブが革に求めるのは、店頭に並んだ瞬間の美しさだけではない。履き心地や耐久性はもちろん、時間を重ねることでさらに美しくなっていくことまでを考えて選ばれている。だからこそ、愛用者から「磨き甲斐がある」という言葉を頻繁に聞くのだろう。そんなジョンロブの考え方を一足で象徴しているのが、今回撮影した“LOPEZ”だ。その原型は1950年代に作られたビスポークシューズにまで遡る。その後、既製靴へと姿を変え、70年以上もの時間を経た今もなお、ジョンロブを代表するローファーであり続けている。特徴的なエプロンのモカステッチは手縫いによるもの。時代に合わせて微調整を繰り返しながらも、ラストを含めてその佇まいは大きく変わることがない。70年の間にファッションは大きく変わり、靴に求められるものも変化し続けてきた。それでも、今の“LOPEZ”を見て古い靴だとは感じない。むしろ、今も欲しいと思わせてくれる品格が流石だ。ビスポークから始まり、既製靴という新たな方法を手に入れ、それでもビスポークを作り続けている。変えるべきところは変えながら、変えてはいけないものは残す。長い時間を経ても変わらない“LOPEZ”の姿を見ていると、そこにジョンロブというブランドの本質があるように感じる。

Shoes ¥265100 by JOHN LOBB (JOHN LOBB JAPAN) Jacket ¥49500 by Supreme®︎/Alpha Industries®︎ (Supreme) Knit ¥34100 by NEEDLES (NEPENTHES) Shirt ¥34100 by Brooks Brothers×NEEDLES (Brooks Brothers Japan) Pants ¥59400 by Fumiya Hirano THE TROUSERS (BEAMS F) Other Items [Stylist’s Own]

ビスポークの人気モデルを原型としたPHILIPは1980年代に既製靴として登場し、2001年にPHILIP IIへと進化。美しく絞り込まれたウエストやシームレスなヒールなど、そのディテールには、ビスポークで培われた美意識を感じることができる。
Shoes ¥349800 by JOHN LOBB (JOHN LOBB JAPAN)

| Photo Masato Kawamura Styling Satoshi Kamei | Hair TAKUMI Model Romeo | Edit Takayasu Yamada Ayuko Hashimoto Samuel Pattison Maki Kinoshita Text Takayasu Yamada |












