BEYOND EARTH by YOSHIROTTEN

ヨシロットンが視覚化する 未知なる宇宙

「ヨシロットン展 彼方との交信/BEYOND EARTH」のメインビジュアルのアートワーク。ヨシロットンの思考のベースにある三次元が表現されたインスタレーションの展示風景のようなイメージから、彼がこの展示で表現する宇宙的空間がどのような体験になるかと楽しみになる。 Photo Taro Mizutani

究極の未知、宇宙。研究や開発が進み、宇宙旅行すら現実味を帯びてきた近年だが、人類がその全てを知る日は果たしてくるのだろうか。しかし、だからこそ人類は宇宙に憧れを持ち、想像を膨らませ続けられるのだ。その一人にアーティストのヨシロットンがいる。「見えないものの可視化」を表現の軸としている彼は、身近なところだと「音を聴くと色や形、絵が思い浮かぶ」と話し、ほかには『SUN(地球のマントルの下に広がるシルバーの海とそのコアをテーマにした作品)』や『FUTURE NATURE(自然とデジタル、宇宙、光をテーマにした作品)』と題したシリーズを発表してきた。そんなヨシロットンが次なるテーマとして掲げたのが宇宙であり、大規模な個展として発表を予定しているのが『ヨシロットン展 彼方との交信/BEYOND EARTH』である。「僕が生まれ育った鹿児島県の大隅半島は、日本ではじめて人工衛星の打ち上げが行われた場所です。住んでいた当時はそこまで意識していたわけではないですが、空が大きくひらけているので、夕焼けや星空がとてもダイナミックで綺麗なことに感動していた記憶があります。とはいえ宇宙は誰しもが小さい頃から好きだと思うのですが、それは大昔の先祖からの細胞レベルの感覚なのかもしれないですし、『未知』にワクワクして冒険するのが人間という生き物なのだと思います。僕が見えないものを可視化して表現する理由には、“目には見えなくても実際にあるから”です。例えばレントゲンでX線を通すと骨が見えるように、見えている世界だけが全てではなく、表面的には見えないけど存在する世界が確かにあるのです。ブラックホールは世界で一番有名な『見えない世界』だと思うのですが、存在すると言われていますよね。それは『固定概念に縛られなくていいんだ』というメッセージでもあります。目に見えないけれども確かに存在するもの同士が繋がり合うことで、新たな何かが起こる。その未知の可能性や自由を考えることが楽しいんです」。

2023年に開催された『SUN』のインスタレーション風景。1日1枚、1年間にわたり描き続けられた銀色の太陽のイメージを元にした全365点の作品群が野外LEDスクリーンに映し出され、フィクションとノンフィクションが融合したようなその景色に来場者は各々の想像を自由に膨らませた。

今回の『ヨシロットン展 彼方との交信/BEYOND EARTH』では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の研究者がヨシロットンの宇宙観やクリエイティビティに強く共感し、研究で得た宇宙に関する最新の情報やデータをアートワーク制作のために提供している。「JAXAにいろいろな情報を提供していただき、ブラックホールや超新星の爆発、恒星軌道、パルサー、地球観測データなどをテーマにして、グラフィックや抽象画、彫刻などさまざまな形にした作品を準備しています。グラフィックはいろんな要素を削ぎ落として、極端にシンプルにして一発で相手に情報を伝える手段だと思っています。でも実は僕は、27インチの画面に向かって平面作品を作っているときも、頭の中では6メートルぐらいのレイヤーの奥行きや立体感を想像していたりします。僕のグラフィックが三次元的であり、空間デザインがニ次元的と言われることがありますが、三次元のインスタレーションにすることは僕にとって自然な流れでした。今回のインスタレーションもかなり大規模ですが、僕にとっては今までと考え方は変わりません。グラフィックもインスタレーションも、レコードプレーヤーに針を落とした瞬間に鳴る音の衝撃のようであるべきだと思っていて、いかに端的で一気に伝えられるかを考えています。特に今回は、会場を照らす電灯は入れないようにしています。日中は自然光のみで館内が照らされ、夜になると作品自体が星のように内側から発光します。ブラックホールのデータがどうとか難しく聞こえることを言っていますが、僕が学術的なことをする必要はないと思っていて。むしろ『なんなんだこれは。うまく言葉にはできないけどかっこいいな』と感じてもらえるような表現をしたいんです。そうして『自由でいいんだ』と思ってもらえるような作品や体験を提供できることを目指しています」。未知なる宇宙を自由に解釈した表現で、空間に足を踏み入れた瞬間に、ひと目見た瞬間に言葉にはできないインパクトを与えられるであろうヨシロットンの本作品群。「見えないものの可視化」という彼のアーティストとしての表現テーマは、人間は自由で想像力に溢れた生物であるという、宇宙の中の一つの真理を伝えているかのようである。

ヨシロットン展 彼方との交信/BEYOND EARTH
会期:2026年10月30日(日)〜2027年1月11日(月)
会場:TOKYO NODE GALLERY A/B/C
住所:東京都港区虎ノ門2-6-2 虎ノ門ヒルズ ステーションタワー8F、45F〜49F

ヨシロットン
グラフィックデザインやアートディレクション、映像、演出、空間設計など多岐にわたる領域で活動。メゾンブランドやミュージシャンなど幅広いグローバルワークを手がける。

Interview & Text Yutaro Okamoto

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