LAPIMA IS BRAZIL Discovering Brazil Through Nature, Art, and Craft

ブラジルの風土を体現する 唯一無二なアイウエアブランド

「LAPIMAはブラジルそのものだ」。世界中のアイウエアブランドを取り扱う名店、グローブスペックスの代表である岡田哲哉が、ブラジル発のアイウエアブランドであるLAPIMAと初めて出会ったときに聞いた言葉だ。だが、その言葉の意味は最初から理解できていたわけではないという。「LAPIMAはブラジルなんです」となぜそこまで言い切れるのか。ブラジルを訪れたこともなければ、LAPIMAを知るのもそのときが初めてだった岡田だが、魅了されたLAPIMAを取り扱うこととなり、実際にブラジルを訪れる機会を得た。創業者のグスタフォとジゼラ夫婦に会い、彼らのアトリエを見学してはブラジルの街々を歩きまわり、国特有の自然や建築、そしてアートに触れた。すると、少しずつその言葉の意味が見えてきたという。アイウエアというキーワードを入り口にその土地に根付く感性やものづくりを知る。岡田の旅を通して見えてきたLAPIMAとブラジルの関係性について聞いた。

最初にLAPIMAを知ったのは、知人たちから「ブラジルにおもしろいアイウエアブランドが出てきた」と聞いたことがきっかけだったという。「ミラノの展示会に出ていたので実際にブースを見に行きました。そこでまずおもしろいなと思ったのが、アイウエアだけではなくブラジルの風景写真がたくさん一緒に展示されていたことでした。アイウエアとブラジルの風景を交互に見せていて、そういうことをしているブランドはあまりなかったんですよね。それでブラジル自体に興味を持ったというのが大きかったですし、ものすごく立体的で、ほかのブランドにはないような色使いやシェイプも多かったことが印象的でした。そこで創業者のグスタフォとギゼラにも出会いました。話をしているなかで『LAPIMA IS BRAZIL』と言われたのを今でも覚えています。最初はどういう意味なんだろうと思っていたんですけど、今回実際にブラジルに行ってみたことで、その言葉の意味がだんだん分かってきたんですよね」。

訪れたのはサンパウロをはじめ、リオやパラチーなど、LAPIMAがブランドとして影響を受け続けている街たち。実際に街を歩いてみると、それまで写真を通して見ていたLAPIMAと現地の風景が、不思議なほどにつながって見えたという。「サンパウロは実際に足を運ぶまではもっとコンクリートの都会というイメージだったんですけど、実際に行ってみるとすごく緑が豊かなんですよね。街の中に木がたくさんあったりして。ウォールペインティングもいわゆるグラフィティというよりアート作品みたいなものが多くて。人も陽気で活力があって、全体的に明るくて元気という感じがしました。現代美術館にも行ったんですけど、花や木など、自然が何らかの形で入り込んだ作品が多かったんです。ブラジルの人にとって自然はアートの世界でもその一部になっているんじゃないかなと感じましたね。LAPIMAが追求する造形を理解するために、まずその背景にある風土を体感しているような感覚でした」。

ブラジルの魅力が詰まった港町
パラチー

今回の旅で特に印象に残った場所として岡田が挙げるのが、リオデジャネイロの南西に位置するパラチーだ。「すごく良かったですね。リオやサンパウロは結構都会なんですけど、そこには東京では見ないような自然がある。一方でパラチーは、ブラジルの良さの原点みたいなものがギュッと詰まっている感じがしました」。海や山など豊かな自然に囲まれた街には、古い街並みや色鮮やかな建物が残っている。石畳を歩けば建築と自然がすぐ隣り合う景色が広がっていた。「街の雰囲気もすごく良かったですね。グスタフォもそこでサーフィンやダイビングをしたりするらしいんですけど、同じブラジルでもリオとは全然違う。リオがエネルギーにあふれたビーチだとしたら、パラチーはゆったりしていてビーチ自体も少し小さめ。同じブラジルと思えないぐらいでした。実際に、LAPIMAもこの街からたくさんのインスピレーションを受けています」。

そんな土地の空気を実際に体験したことで、「LAPIMA IS BRAZIL」という言葉も少しずつ具体的なものになっていった。さらに訪ねたのがグスタフォとギゼラの自宅だった。そこにはブラジルの現代アートや大量の本が並び、テラスと家の中、さらにプールまでが連続するような、内と外の境目が曖昧な空間が広がっていた。「グスタフォたちは、LAPIMAを始める前にやっていた洋服のビジネスを経て、まずは自分たちの理想の家をつくろうとしたんです。その家のつくり方やデザインと、メガネのデザインがすごく共通しているように感じました。置いてある本の数もものすごく多くて、そういったパーソナルな部分からも彼らの価値観やデザイン観が感じられましたね。言葉以上に、実際に家を見てみることで新しい発見がたくさんありました。ブランドを見るだけでは分からないような、実際にものをつくっている人たちの暮らしを見る。そこから、LAPIMAのデザインがどこから生まれているのかが私の中でより鮮明になりました」。

デザインのすぐ側に
つくる人たちがいる

LAPIMAのアトリエでは、スケッチから3Dのプロトタイプを起こし、実際に職人がつくり、さらにその場で微調整まで行う。企画から試作、製作までがひとつのフロアに集約された環境だ。「日本だと、東京でデザインしたものを福井のサプライヤーに送って、そこからデータを変換して、さらに工場に入ってというように、いろいろな人や場所を介することがありますよね。でもLAPIMAの工場はワンフロアで、最初の企画から3Dのプロトタイプをつくって、職人さんが微調整もできる。そういう環境なんです」。そこで岡田氏が感じたのは、単なる効率の良さではなかった。「デザイナーも実際につくっている職人さんたちもすごく一体感がありますね。みんなでその場でつくり上げるというのがものすごく魅力的でした。それにデザイナーのブラジル愛がすごいんですよ。それをつくる人たちもみんな同じことを共有していて、すごく楽しそうにやっている。仕事でやっているという感じじゃないんですよね」。そのブラジル特有の陽気な感覚はプロダクトの細部にも表れている。インスピレーション源はファッションだけではなく、建築や現代アート、自然、そしてサーフィンやスケートボードなどのブラジルの日常にあるものだ。「前回のコレクションがサーフボードやスケートボードからインスピレーションを受けているんです。グスタフォ自身もサーフィンをする人なので。ブラジルはスケートボードもすごく盛んで、そういうところから曲線的なフォルムにもつながっているんじゃないかなと思います。彼らのものづくりに対しての姿勢にもその土地らしさが表れている気がします。素材を全部ピカピカに磨くのではなくて、あえて素材そのものの質感を残したりするんですよね。表側をマスキングして、裏側だけを磨くような加工職人さんが手作業で行っていました。そういうところにもLAPIMAならではのものづくりのおもしろさがあると思います」。

別の惑星に来たような
唯一無二な感覚

岡田はこれまで、北欧からラテン系の南欧殆どの国、チェコなど東欧、カナダ、アメリカ各地、メキシコなど、さまざまな土地を訪れてきた。その中でも初めて訪れた南米ブラジルという大地。ほかの国々とは全く違う感覚があったという。「今までヨーロッパやアメリカなど、さまざまな場所を旅しましたが、大体海外ってこんな感じだろうというイメージがありました。ただブラジルは別の惑星に来たような特別な経験でしたね。それぐらい地球って広いんだなと感じました」。サンパウロの街に広がる豊かな緑、ウォールペインティング、陽気さや活力。さらに、強い日差しや植物のワイルドさ、街にあふれる色彩。そうした環境そのものが、ブラジルで生まれるアートやデザインの背景にあることは間違いなさそうだ。一方で、ブラジルには輸入に関する関税や税率が高く、海外の衣類などが手に入りにくいという側面もある。「日本のものとかも、衣類を含めてまずほとんど手に入らないんですよね。そういう環境もあって、アメリカやヨーロッパ、日本と比べると、デザインの世界でもちょっと独立しているようなところがある。そこに突如LAPIMAみたいな立体的なアイウエアブランドが出てきて、そういう環境もLAPIMAのユニークさにつながっているのかもしれません」。もちろん、それだけでLAPIMAの個性を説明できるわけではない。「外から入ってくるものにそのまま影響されるというより、自分たちのいる場所から生まれてくるものがあるんですよね。今回の旅を通して見てみて、最初に言われた『LAPIMA IS BRAZIL』という言葉が本当にそうなんだなと実感しました」。

アイウエアを通して
その土地を知る

グローブスペックスがLAPIMAを紹介するうえで大切にしているのも、アイウエアだけを切り取らないことにある。「LAPIMAは五感で楽しむブランドだなと思います。日本にもデザインや素材にこだわったものはたくさんありますが、五感で楽しむものってなかなかないなと思って。今回現地に行ってみてすごく感じましたね」。その魅力は、アイウエアを一見しただけでは伝わりにくい。「パッと見ではやっぱり感じられないので、そこは僕たちグローブスペックスのほうで発信し続け、メガネだけじゃなくブラジル自体をもっと知ってもらいたいなと思っています。ブラジルは国としては知られているけれど、カルチャーの部分ってあまりイメージがないと思うんですよね。行ってみるとアートと自然の融合だったり、アーティストの色彩感覚だったり、次から次へと国の表情が見えてきます」。そして、今回の旅は一方的にブラジルを知るだけのものでもなかった。グスタフォとギゼラは以前日本を訪れ、東京や京都を巡っている。日本の文化に触れた経験は、LAPIMAのデザインにもつながっているというのだ。「グスタフォもギゼラも実際に東京や京都を巡り日本の文化をすごく好きになってくれました。ちょうど当時のコレクションの際は、日本に来たときに見た空の色を表現したカラーもありました。なのでお互いの文化をリスペクトし合い、ブランドや会社を盛り上げ合っていく。そういった関係性の部分も勉強になりましたね。実際にLAPIMAのオフィスで日本限定のコレクションについてのミーティングも行ってきました」。ブランドの背景を知ることは、その土地を知ることでもあり、その土地を知ることでプロダクトそのものの見え方も変わっていく。「ブラジルは想像をはるかに超えていました。まだ見たことのない景色や感じたことのない感覚がこんなにもあるのかと思いましたし、だからこそ、まだまだ伝えられることがあるんじゃないかなという大きな期待があります。まずはこのブラジルの素晴らしさをLAPIMAを通じて発信していきたいですね」。

「LAPIMA IS BRAZIL」という言葉は、単にブラジル生まれのアイウエアブランドだという意味ではない。自然やアート、建築やものづくりに対する姿勢、そしてそこに暮らす人々のエネルギー。さまざまなものが重なり合う土地の感性がLAPIMAというひとつの形になっているのだ。今回の旅で岡田氏が見つけたのは、ひとつのブランドの背景だけではなく、まだ知らない場所へ足を運ぶことで世界にはまだまだ新しい発見があるということ。そのこと自体が、LAPIMAとの出会いから得た大きな収穫だったのかもしれない。

岡田哲哉
1998年に東京の渋谷にグローブスペックスをオープン。代官山や京都にも店舗を展開し、現在の渋谷店ではサロンのような空間で岡田自身が一人ひとりに向き合い、その人にとっての一本を提案するサービスも行っている。2025年からブラジルのアイウエアブランド「LAPIMA」の日本総代理店を務めており、ブランドの根底にある魅力を伝えるために2026年の7月に現地を訪れた。

Photo  Suguru SaitoInterview & Text  Samuel PattisonEdit  Yutaro Okamoto  Samuel Pattison

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